鉄コン筋クリート
2006年 劇場版


評価 70点

作品解説


宝町で暮らす少年クロとシロは、かつあげやかっぱらいを行って日々暮らしていた。ヤクザ相手にも一歩も引かないクロ…そんな彼の前に、町を近代化して支配しようとする蛇という危険な男が現れる。


この松本大洋作品というのは、キャラが非常に味わい深いですね。この作品も、メイン・サブ含めて濃いキャラが多かったですから、一人一人がしっかりと印象に残っているんですよ。こういったキャラ造形、そして築き上げた独特の世界観というのは結構好きです。
ただ、内容の方は劇場で公開するような大衆向けの作品とは言い難いところがある気がします。この何処かカオスを感じさせる雰囲気…巷で放映されてるそこいらの深夜アニメ以上に深夜向けの作品ですよ。特に終盤は、精神世界のようなものに入っちゃいますから、ますます混沌としているうえに分かり辛いです。
ということで、それなりに見所はあったように思うのですが、ちょっとテーマが不鮮明にも見えました。
あと、途中までの流れから「町」というものが一つのキーワードだと思ったんですが、その部分にハッキリと決着をつけて無いんですよね。
時代の流れと共に変わろうとしていた「町」…それが、その後どうなっていくかの詳細は特に語られていませんでした。まあ、変革の中心人物もいなくなったし、多分今のままで変わらないってことなんでしょうけど、そこは大事な部分だからちゃんとしておかなければいけない気がします。
まあ、内容に多少気になるところもありましたが、一つの映像作品としての完成度は高く、十分に合格点をあげられる出来だと思います。特に、「町」に関しての描写はなかなかにレベルが高いです。この背景部の作画は見る価値ありですよ。
ちなみに、声優は芸能人がやってますけど、シロ役の「蒼井優」さんは良かったです。凄くいい演技してますよ。



主な登場人物と名言(?)

・クロ 「この街が地獄なんだ」
 シロと共に廃車の中で寝起きしているホームレスの少年。宝町を自分の町だと主張し、そこで我が物顔をする者に対しては無茶もやってます。喧嘩好きのどうしようもない悪ガキですが、シロを守ることを生き甲斐とし、色々と彼の世話を焼いているところはいい兄貴なんですよね。

・シロ 「こちら地球星日本国シロ隊員。応答どうじょ〜」
 クロの相棒で、ちょっと頭悪そうなガキ。よくどっかに電波の送受信を行ってましたw こいつの独特の感性というか、少し普通の人とは違った言動がいい味出してますよね。それを上手く演じきった蒼井優さんはお見事。ちなみにこいつは、宇宙一の蹴りを持っているらしいです…自称。

・鈴木(ネズミ) 「誕生こそ消滅の始まりなのだよ」
 昔気質のヤクザ。一本筋の通った男であり、自分を育ててくれた町の変革には否定的でありました。クロとは明確に敵対してるというわけでもなく、同じ町に住む仲間…とまではいきませんが、その存在は認めているような印象を受けました。

・木村 「自分は、何も信じません」
 鈴木の舎弟。フラフラしているところを彼に拾われ、ヤクザ道というのを一から教わったみたいです。しかし、こいつはなかなかいいキャラでしたね。作中では結構見せ場がありました。まあ、色々やっちゃったんで、こいつだけ幸せにはなれないだろうなと思っていたら…

・藤村 「これ以上、この街を汚すなよ」
 宝署に勤務するベテランの刑事。鈴木とはちょっとした訳ありな仲のようです。親も無く、町で悪さばかりしているクロとシロのことを気に掛けているようにも見えました。

・沢田 「かっこいいな〜、ヤクザ」
 宝署に勤務している若手の刑事。到底そうは見えませんが、実は東大を出ていて、国家試験蹴ってまで現場に回ってきたらしいです。ちなみに不感症らしいです。

・源六 「この子の痛みは誰にも分からん」
 ホームレスのじいさん。クロとシロにとっては、親代わりの存在でもあります。

・蛇 「演歌どっぷりの人間をクラシックに変えるのが我々の仕事ですよ」
 宝町を変革させようと取り仕切る謎の人物。バックには何か大きな組織もあるようでしたが、そこんところは詳しく語られていませんでした。目的のためには手段を選ばず、邪魔になるものは力で排除していきます。町の変革のために、まずはヤクザを利用しようと接触を図ります。



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