No.9 日本最長のヒロイックファンタジー(その2) 




 No.8に続いて、グイン・サーガの紹介です。
 作品の内容を簡単に説明すると、記憶を失った豹頭の主人公グインが、様々な大活劇の末に一国の王にまで出世していくという話です。このグイン…豹頭が示すように、普通の人間とはかなりかけ離れた存在なんですよね。この物語は、彼の失った記憶に秘められし大いなる謎というのが、キーポイントになるだろうと思われます。

 しかし、メインとなってくるのは彼の話だけではありません。ぶっちゃけ、主人公の出番がほとんどないような時期もありますからね(汗)

 その間は、傭兵イシュトバーンの国取り物語…いわゆるイシュトバーン・サーガや、伝統ある国の王族・ナリス様の陰謀ストーリー…ナリス・サーガといったものが数巻(数十巻?)に渡って繰り広げられます。
 3人のメインキャラが活躍する舞台は、別々の場所にある3つの大国。まあ、前半はグインとそのイシュトバーンが仲間として共に戦ったりもしてますが、それも途中でバラけてしまって、それぞれが各国の王になる道を歩んでいくことになります。

 グインの物語は、まさにヒロイックファンタジーの超王道。強く、賢く、正しい存在である彼が、徐々に仲間達の信頼を得ていき、途中魔物退治して姫様助けたりなんて大冒険もしながら、世界最強の国の王になるというお話。

 それに対してイシュトバーンの国取りは、グインの正々堂々とした出世とは違って、まるで野党のような乗っ取り…史上最大の成り上がりです。まあ、ある意味それが何ともいえない痛快さなんですけどね。
 けど、こいつはいい意味でも悪い意味でもガキなんで、王様なんかが務まる輩じゃあありません。力によって強引に道を切り開き、自分の思ったように行動していく彼は、ついには残虐王なんて呼ばれる修羅の道を歩むことになります。

 そして、美貌の天才ナリス様…この方はもうすんごい!ここの話が一番濃いですね。様々な陰謀を張り巡らせ、己の敵を排除していくナリス様のちょっと危ない魅力に私ももうメロメロでありますw 自分のことしか考えてないイシュトバーンですら、この人には惚れちゃいますからね。
 けれど、この方にも色々問題があって、あまりにも魅力的であるが故に従兄弟である王太子(後の王様)からは妬まれ、両者の間には根深い確執が存在しています。それは、後に王家を二分した骨肉の争いにまで発展していくことになります。

 このように、主人公グインがいないところでの話もなかなかに興味深い。つーか、むしろ彼らの方がグインよりずっと魅力があるし、こっちの方が話も面白いように感じます(爆)
 それに、この作品はサブキャラも皆凄く魅力的なんですよね。誰に注目しても、それぞれがいい仕事してますよ。

 例を挙げると、完全無欠主人公グインには到底似使わないブサイク不貞妻・シルヴィア…イシュトバーンをどんどん誤った方向に導いていくホモ醜男・アリストートス…ナリス様の右腕(奴隷?)であり中間管理職の悲哀を持つ苦労人魔道師・ヴァレリウス…
 彼らのような濃いキャラがしっかりと脇を固めているので、この作品は磐石なのです。

 それで、作品の構図的には三国志みたいな印象がありますが、まだ何処かと何処かが明確な敵対関係にあるわけではないです(この先どうなるかは分かりませんが…)
 彼らが王になった後、この地に住む人間の共通の敵みたいのが出てきて、それに3国全てが巻き込まれることになるんです。その対処に凄い巻数が費やされたんですよね〜(数にして20冊以上は費やされたろうか?)
 まあ、それだけ大層な戦いを繰り広げた後なんで、今はその事後処理が大変でお互いに他の国と戦ってる余裕なんて無いみたいです。

 さあて、これからどうなるんでしょうか?そして、完結されるのかグイン・サーガ!?


 追記:残念ながら、作者の栗本薫さんがお亡くなりになってしまい、この作品は未完となってしまいました。先生、素晴らしい作品をありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします(2009年6月)




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